この記事の監修者
薬剤師 坂井 幸子
2023.11.07
血糖値を緩やかに上げるには普段の生活を少し見直すだけ!今日からできる簡単な対策方法とは
みなさんは、自分の血糖値が普段どのように変動しているか知っていますか。
体内での働きのことなので、なかなか知ることは難しいかもしれません。
しかし、普段の食生活から、血糖値が急激に上がりやすいのかどうかは知ることができます。
一般的に、誰でも食後に血糖値が上がり、しばらくして元の数値へ戻っていきますが、
体の状態によっては緩やかに上がる人・急激に上がる人に分かれます。
本来は緩やかに上がり・緩やかに戻っていくことが理想とされているので、
そのような動き方へ改善していくために、今の自分の状態を知り食生活を見直してみましょう。
血糖値は「緩やかに」上げて・下げることが大切
血糖値は、体のエネルギー源となるブドウ糖の血中濃度を示す値です。食事や運動をはじめとする日常生活のなかで血糖値はたえず変動しています。しかし、血糖値が突然大きく変動すると、身体に負担がかかることになるため、血糖値の緩やかな変動を促すような生活を送ることが推奨されています。
以下では、血糖値の定義、血糖値が急激に上昇することによるリスクについて解説します。
そもそも血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示す数値です。私たちが食事を通じて摂取する炭水化物は、体内でブドウ糖に分解され、エネルギー源として使用されます。
ブドウ糖の量が適切であれば、私たちの身体はブドウ糖を活動のエネルギーとして消化しながら機能します。食事の内容やタイミング、生活習慣によって血糖値は上下しますが、血糖値が正常な範囲を超えて変動すると、身体の機能や状態に影響を与えることがあります。
食後の血糖値はどのように推移する?
食後、私たちが摂取した食物は消化され、炭水化物がブドウ糖として血液に吸収されます。ブドウ糖の吸収により、血液中のブドウ糖濃度が高くなることから、血糖値は一時的に上昇します。
なお、血糖値がどれくらい上昇するかは、食事の内容や量に応じて変わるため、摂取する食品によっては急激な上昇を示すこともあります。とくに、糖分が多い食品を摂取した場合には、血糖値が急激に上昇しやすくなります。
食後に上昇した血糖値はピークを迎えたあと、徐々に下降していきます。下降の速度や持続時間は、摂取した食品の種類や個人の体質、そして食後の活動量などによって影響を受けます。たとえば、食事の際に食物繊維を多く摂取することで、血糖値の上昇が緩やかになり、ピークも低くなることが知られています。
食後血糖値については、こちらの記事で詳しく解説しています。
血糖値の急上昇は健康リスクを高める!
前述のとおり、糖質の多い食品などを摂取したあとには、血糖値が急激に上昇することがあります。血糖値の急上昇は、体のバランスを乱す可能性があり、体調不良を引き起こすことがあります。
たとえば、急激な変動は疲れやすさや集中力の低下などの原因となることがあります。そのため、血糖値の急激な変動を避け、緩やかな変動を心がけることで、健康の維持につながります。
血糖値スパイクとは
血糖値が急激に上がることは、血糖値スパイクといわれています。血糖値の推移をグラフによって可視化したときに、急上昇した部分が鋭くとがったように見えることから名づけられています。
生活習慣やストレスによる血糖値スパイク
前述のとおり、食事は血糖値に与える影響が大きく、食べすぎや糖分のとりすぎは血糖値のスパイクを引き起こしやすくなります。しかし、そのほかにも血糖値のスパイクにつながる原因はあります。
たとえば、長時間の座ったままの生活や運動不足は、血糖値スパイクのリスクを増加させることが知られています。また、ストレスの多い生活をしていると、ホルモンバランスを乱し、血糖値に影響を及ぼす可能性があります。
血糖値の急上昇は食事の仕方で防げる!
血糖値の急上昇を防ぐうえでは、食事の内容や食習慣を改めることが効果的です。適切な食事の選び方や食習慣を採用することで、血糖値の急激な上昇を抑制し、健康的な状態を維持することにつながります。
以下では、血糖値に配慮した食品の選び方、食習慣の改善方法について解説します。
GI値をチェック!血糖値を緩やかに上げる食品の選び方
GI値(グリセミック指数)とは、食品が血糖値に与える影響を示す指標です。GI値の高い食品は血糖値を急速に上昇させる特性があり、反対にGI値の低い食品は血糖値の上昇を緩やかにします。
たとえば、GI値の高い食品として白米やパン、麺類、じゃがいもなどがあげられます。一方、GI値の低い食品には、肉や魚などのタンパク質、乳製品、デンプン質以外の野菜などがあります。
炭水化物の多くはGI値の高い食品に属するため、過度に避けようとすると、食事のなかで主食をとるのが難しくなってしまいます。そのため、玄米や全粒粉パンのように、炭水化物のなかでも比較的GI値の低い食品を主食として取り入れたり、炭水化物の量を減らしたりする方法がおすすめです。
GI値については、こちらの記事で詳しく解説しています。
食品の選び方と組み合わせて◎食習慣や食生活の改善方法
食品の選び方だけでなく、どのような組み合わせで食事をとるかも血糖値に影響を及ぼします。たとえば、炭水化物を摂取する際に、食物繊維やたんぱく質を一緒に摂ることで、血糖値の上昇が緩やかになることが知られています。
また、食事の際にいきなり炭水化物から口にするのではなく、食物繊維の多い野菜類、たんぱく質などをはじめに摂取すると、血糖値スパイクを抑えやすくなります。
さらに、トロント大学のジェンキンス博士によれば、1日のうち最初にとる食事は、次の食事後の血糖値にも影響があるとされています。これはセカンドミールと呼ばれ、具体的には、食物繊維の多い大豆などを含む食事は、次の食事のときの血糖コントロールを改善するというものです。
なお、食物繊維の豊富な食品は、粘質物による消化・吸収の遅延が発生し、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果も期待されるため、積極的に摂取することをおすすめします。
食事と血糖値の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
血糖値を緩やかに上げる食品の例
前述のとおり、血糖値をコントロールするうえでは、食品の選び方がポイントとなります。具体的にどのような食品が推奨されているのでしょうか。
以下では、血糖値を緩やかに上げる食品の例について紹介しますので、ぜひ日々の食生活に取り入れてみてください。
オリーブオイル
オリーブオイルは、糖質の吸収を抑え、血糖値スパイクを防ぐ食品として知られています。さらに、血液をサラサラにするはたらきがあるオレイン酸も含まれており、健康維持の効果も見込まれます。
なかでも、精製したオイルが含まれていないエキストラバージンオリーブオイルがおすすめです。1日あたり大さじ1~2杯ほどを目安に摂取するとよいでしょう。
きのこ
きのこは、糖質の吸収を緩やかにするだけでなく、さらにインスリンの分泌を活性化する効果もあるため、高血糖の予防も期待できます。
また、うまみ成分も多く含有されており、塩分の摂取量を控えることにもつながるでしょう。
アボカド
アボカドは、「森のバター」とも称される果物で、オレイン酸をはじめとする脂質を多く含んでいます。脂質によって糖の吸収速度を緩められるほか、ビタミンEなども豊富に含有しており、美容や健康維持の観点から注目されている食品です。
血糖値の上昇を緩やかにするうえで気を付けたい生活習慣
血糖値をコントロールするうえでは、食事以外にも気を付けるべき習慣のポイントがいくつかあります。
以下では、血糖値の上昇を緩やかにするうえで気を付けたい生活習慣について解説します。
食前に入浴して身体を温める
食事の前にお風呂に入って身体を温めることは、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。入浴によって身体を温めると、副交感神経が優位になるとともにリラックスした状態になり、内臓機能が活性化します。
すい臓のはたらきが盛んになることからインスリンの分泌が増え、食事の際に糖質の効率的な処理をサポートし、食後の血糖値の急激な上昇を抑えやすくなります。
食後に適度な運動を習慣づける
運動は血糖値を効果的にコントロールする方法の一つです。とくに、食後30分から1時間後の運動は、血糖値の上昇を抑えるのに役立ちます。また、持続的な有酸素運動は、インスリンによる血糖値を下げるはたらきをしやすくする効果もあり、血糖値の長期的な安定に寄与するともいわれています。
日常的な運動習慣は、血糖値以外の部分においても健康的な生活につながるため、積極的に取り組んでみるとよいでしょう。
睡眠の質を向上させる
日常的に深い睡眠がとれていると、インスリンに対する感受性の改善につながる効果が期待されています。深い睡眠時にあらわれる脳波は、翌日の日中の神経系のはたらきに影響しており、インスリンの感受性が高まることから血糖管理が改善されるメカニズムです。
カフェインやアルコールの摂取を控えたり、就寝前のテレビやスマホを避けたりと、深い睡眠をとれるような睡眠習慣を心がけましょう。
まとめ
血糖値の管理は、私たちの健康にとって非常に重要です。緩やかに血糖値を上げることで、健康リスクを低減させることができます。食事の選び方、適度な運動、質の高い休息や睡眠などがカギとなるため、血糖値をコントロールするのに適した生活習慣を身につけられると、正常な血糖値を維持しやすくなります。
この記事の監修者
薬剤師
坂井 幸子
薬剤師。病気の「治療」と「予防」両方大切だと考え、健康と食物の関係を日々研究。
生活の中で体に必要な栄養を補い、正しいコンディションで過ごせるように栄養学の観点から健康と美容をサポートすることを得意としている。
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