この記事の監修者
薬剤師 坂井 幸子
2024.04.11
【放置はNG!】中性脂肪の数値が低いままだと体はどうなる?数値を上げるための方法とは
「中性脂肪」と聞くと、数値を増やさないようにしたら大丈夫なのでは?と思う方が多いでしょう。
ですが、中性脂肪の数値は低ければ低いほど良いというわけでもありません。逆に「低すぎる」のも注意が必要なのです。
実際に、健康診断などで「中性脂肪が基準値を下回っている」といった指摘をされた方もいるのではないでしょうか。
高すぎる・低すぎるを問わず、基準値から外れてしまうことは何らかの健康リスクが及ぶ場合があります。
この記事では、中性脂肪が低くなってしまう原因や数値を高めるために実践して欲しい方法などをご紹介しています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
「中性脂肪が低い」とされる数値はどこから?
中性脂肪とは、食事から摂取された余分なエネルギーが体に蓄えられた脂肪の一種です。
中性脂肪が高いと健康リスクがあることは言うまでもありませんが、体内でエネルギーを貯蔵する役割を果たしているため、実は中性脂肪が低い状態も望ましくありません。
具体的には29mg/dL以下になると、数値が低すぎると見なされ、異常値と判断されます。
中性脂肪の基準値
中性脂肪の基準値は、通常、血液検査で30〜149mg/dLの範囲とされています。ただし、中性脂肪の基準値は人によって異なり、年齢や性別、健康状態、生活習慣などの要因によって影響を受ける場合があります。
次に、中性脂肪が低い場合と、高い場合に分かることについて解説します。
中性脂肪が低いことから分かること
中性脂肪が低い場合、過度の栄養不足や栄養吸収の問題が考えられます。体内に必要な栄養素が不足していることを示すサインであり、健康や免疫機能に影響を与えることから、以下のような症状が表れることがあります。
• 疲れやすくなる
• しっかり寝ても体力が回復しづらい
• 肌荒れや髪の毛の抜け毛が増える
• 免疫力が下がりやすくなる
中性脂肪が低い状態では、健康に影響を及ぼすだけでなく、病気のリスクも高まるため、健康診断で基準値を外れている場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
中性脂肪が高いことから分かること
中性脂肪が高いと、さまざまな健康リスクがありますが、具体的には以下のような症状に悩まされやすいです。
• 動脈硬化
• メタボリックシンドローム
• 異所性脂肪
中性脂肪の数値が高い方は、定期的な健康診断や医師の指導のもとで適切な対策をすることが重要です。健康的な生活習慣の確立やバランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの管理などにうまく取り組めると、中性脂肪の数値をコントロールしやすくなるでしょう。
コレステロール等も要チェック!中性脂肪とあわせて確認したい数値
中性脂肪のほかに、血液中の脂質値も健康状態に大きく影響することから、以下3つのコレステロール数値にも気を配ることをおすすめします。
• LDLコレステロール
• HDLコレステロール
• Non-HDLコレステロール
LDLコレステロールは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、肝臓で生成されたコレステロールを体全体に運ぶ役割を果たしています。LDLコレステロールの基準値は、以下のとおりです。
基準範囲 | 60〜119mg/dl |
要注意 | 59mg/dl以下/120〜179mg/dl |
異常 | 180mg/dl以上 |
高コレステロール食品や動物性脂肪の過剰摂取には注意し、食物繊維や青魚などEPA/DHAを多く含む食事をとることを心掛けて、コレステロール値をコントロールしましょう。
HDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収して動脈硬化を抑える役割をもつもので、善玉コレステロールとも呼ばれています。HDLコレステロールの基準値は、以下のとおりです。
基準範囲 | 40mg/dl以上 |
要注意 | 35〜39mg/dl |
異常 | 34mg/dl以下 |
運動不足や喫煙は、HDLコレステロールを下げる原因となるので、HDLコレステロールが少ない方は生活習慣の見直しが効果的です。
Non-HDLコレステロールは、LDLコレステロールを含む、動脈硬化のリスクを示す脂質の総量のことをさしており、基準値は以下のとおりです。
基準範囲 | 90〜149mg/dl |
要注意 | 89mg/dl以下/150〜209mg/dl |
異常 | 210mg/dl以上 |
Non-HDLコレステロールが基準範囲外の方は、脂質や飽和脂肪酸を過剰に摂取しないようにしましょう。また、糖質のとりすぎは中性脂肪の値を上昇させる可能性があるので、甘いものを控えることも大切です。
中性脂肪とコレステロールのバランスは重要なので、両方の数値を定期的にチェックすることが健康管理に役立ちます。
健康を意識していたのが逆効果?中性脂肪が低い原因
中性脂肪を減らそうとして、食事制限や激しい運動を行う方もいるかもしれませんが、実は健康に悪影響を与えることがあります。どちらも体に負担をかけてしまい、かえって中性脂肪を低くする原因になりかねません。
以下では、中性脂肪の数値が低い方が注意したい習慣について解説します。
極端な食事制限
極端な食事制限は、脂質や糖質をはじめ、必要な栄養素を十分に摂取できなくなるため、体内の脂肪が十分に生成されなくなり、健康に悪影響が生じる可能性があります。また、心身にストレスを与え、代謝を乱すこともあるかもしれません。
健康的な体重管理や中性脂肪の調整を目指す場合でも、極端な食事制限は避け、栄養バランスのとれた食事と適度な運動を重視することが重要です。
過度なダイエット
脂質や糖質を極端に制限したり、食事の量を大幅に減らしたりするような、過度なダイエットは、体に必要な栄養素を不足させ、脂肪の生成を抑制してしまいます。また、栄養不足によって免疫力が低下し、疾患のリスクが高まることも考えられます。
もしダイエットをするとしても、十分な栄養素をとりつつ、無理のない範囲で取り組むようにしましょう。
激しい運動
激しい運動は、体内のエネルギーを大量に消費し、脂肪の燃焼を促進してくれますが、あまり負荷をかけすぎると、過剰なエネルギー消費や筋肉の疲労につながってしまいます。とくに、短期間で大きな運動負荷をかけると、運動中に脂肪がエネルギー源として利用され、体内の中性脂肪を減少させてしまいます。
その結果、体に必要なエネルギー源が不足し、代謝や生理機能に支障をきたしてしまう可能性もあるので、中性脂肪が低い方は軽めの運動を心がけましょう。
異常値の放置はNG!中性脂肪が低いことで招く体への影響
体内の中性脂肪は、エネルギー源として重要な役割を果たしていますが、中性脂肪の数値が極端に低くなると、代謝や生理機能に影響を及ぼすため、異常値を放置すべきではありません。
以下では、中性脂肪が低いことによる体への影響について解説します。
エネルギー不足で疲れやすい
中性脂肪は、体内のエネルギー源として機能することから、中性脂肪が低いとエネルギー不足により疲れやすくなります。本来、食事から摂取した余分なエネルギーを中性脂肪として蓄えておき、必要なタイミングで使われるのですが、中性脂肪が不足していると体が十分なエネルギーを得られず、日常の活動や運動に必要なエネルギーが足りなくなってしまうのです。
必要な栄養の吸収が不足する
中性脂肪には、体に必要な栄養素を輸送し、吸収を助ける役割も果たしているため、中性脂肪の不足によって、脂溶性ビタミンなどの栄養素がうまく吸収できなくなる可能性があります。
また、中性脂肪の不足とともに、重要な栄養素である脂肪酸が不足し、肌荒れや抜け毛などの症状が起こるケースもあります。
体温調節が適切にできない
中性脂肪は、体内のエネルギー源として重要な役割を果たしていますが、同時に体温の調節にも関与しています。とくに、体温を保つ役割を担う皮下脂肪組織が減ると、体が冷えやすくなったり、寒さに敏感になったりします。
また、体温調節が妨げられることで、体内の代謝が低下し、基礎代謝量が減少することから、免疫力が下がるおそれもあるでしょう。
無理なく健康体へ!中性脂肪を増やす方法
前述のとおり、中性脂肪が低い状態は体にとってさまざまな悪影響を及ぼすことから、健康な生活を送るうえでは、中性脂肪を基準値まで増やすことが大切です。日々の食事をはじめ、生活習慣を見直すことによって、無理なく健康体になるための対策をしてみませんか。
以下では、中性脂肪を増やす3つの方法について解説します。
栄養バランスの整った食事を心がける
中性脂肪を増やすには、さまざまな栄養素をバランスよく摂取できるような食事が理想的です。たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをはじめとする栄養素のバランスを意識し、健康的な食習慣を心がけましょう。
また、普段の食事量が少ない方は、まずは食事量を増やし、積極的に糖質や脂質を摂取すると、中性脂肪の増加につながります。ただし、極端に糖質や脂質ばかりをとると、栄養バランスが崩れてしまうので注意しましょう。
炭水化物を多めにとるようにする
穀類、パスタ、米、パンなどの炭水化物は、中性脂肪に変わりやすいため、積極的に炭水化物をとることをおすすめします。ただし、糖分の多い食品やお菓子などで炭水化物を多くとるのはNG。
穀物や野菜をはじめとする複合炭水化物をとるようにすると、栄養バランスを保ちつつ、炭水化物を中心とした食事ができるでしょう。
3食規則正しく食べる
規則正しい食事リズムを保つことも、消化吸収や体内の代謝を安定させるために重要で、朝食・昼食・夕食の3食を規則正しくとることで、中性脂肪の生成を促進してくれます。
また、間食などを適度に取り入れ、長時間空腹にならないように食事の間隔を一定に保つと、血糖値の急激な上昇やストレスホルモンの分泌を抑制し、中性脂肪の増加を防ぐことができます。
まとめ
中性脂肪の数値は、低ければいいというわけでもなく、疲れやすくなったり、必要な栄養が不足したり、体温が低下したりと、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。健康的な生活を送るうえでは、適切な範囲に維持することが重要ですので、極端な食事制限や過度なダイエットをしている方は、無理のある生活習慣によって中性脂肪が低くなりすぎていないかチェックしてみましょう。
もし基準値に比べて低すぎるようであれば、負荷の大きな運動を控えると同時に、3食栄養バランスの整った食事をとり、炭水化物を多めにとるような食生活を心がけてみてくださいね。
この記事の監修者
薬剤師
坂井 幸子
薬剤師。病気の「治療」と「予防」両方大切だと考え、健康と食物の関係を日々研究。
生活の中で体に必要な栄養を補い、正しいコンディションで過ごせるように栄養学の観点から健康と美容をサポートすることを得意としている。
記事に関連するタグ
同じカテゴリーのコラム
人気のコラムランキング