この記事の監修者
医学博士 大塚 亮
2022.08.01
【医師監修】ダイエット効果や美肌効果も?正しい腸活のやり方
「腸活」というワード、最近よく耳にするようになりました。腸を整えると健康になるのは分かるけど、何から始めたらいいか分からないという方も多いかと思います。腸活は便秘改善だけでなく、ダイエット効果や美肌効果、免疫力向上などメリットだらけ◎
腸活のやり方をご紹介するので是非、日常生活で意識してみてくださいね。
1.腸活はいいことだらけ!
「腸活」とは、栄養バランスの整った食事や適度な運動を通して、乱れた腸内環境を整えること。美容や健康に関心が高い方の中でも大人気の健康法ですよね。
腸は食べたものを消化・吸収し、老廃物を排泄する器官で、腸内には約100兆個、約1000種類の善玉菌、日和見菌、悪玉菌といった腸内細菌が存在しています。これらのバランスが腸内環境のカギを握っているのです。
では、その善玉菌・日和見菌・悪玉菌は腸内でどのような働きをしているのでしょうか。
■善玉菌
腸内環境を健康な状態に維持するために働きます。腸内に侵入してくる病原菌から守るといった役割があり、代表的なものにビフィズス菌や乳酸菌があります。
■日和見菌
体の状態によって善玉菌にも悪玉菌にもなる菌です。普段は影響を与えることはありませんが、免疫力が落ちて風邪をひくなど、体が弱ると悪玉菌のように悪影響を及ぼします。代表的なものにレンサ球菌があります。
■悪玉菌
腸内でタンパク質を分解して有害な物質を発生させたり、発がん性物質を作り出すなど、病気を引き起こす原因となります。代表的なものにブドウ球菌や大腸菌などがあります。
善玉菌が悪玉菌の増殖を抑えているときは、腸内バランスが整っているといえます。しかし、生活習慣や食生活が乱れることで、善玉菌の数が減って悪玉菌が増えます。すると腸内環境が悪化し、下痢や便秘などを引き起こすのです。
これらの腸内細菌は、花畑のように並んでいることから「腸内フローラ」と呼ばれています。腸内環境の良し悪しは、腸内細菌のバランスによって決められています。
腸活とは、菌のバランスを整えて腸内環境を改善することが目的です。また、腸活をすることで、以下にご紹介するような良いことがたくさんあります。
メリット1 免疫力がアップ
腸は食べたものを消化・吸収するのが主な役割ですが、免疫にも深い関わりのある器官です。病気の原因となるウイルスや細菌から身を守れるのは、腸内にある「免疫細胞」のおかげです。腸内には、全身の約70%もの免疫細胞が集まっています。腸活をして腸内を正常な状態にすることで、免疫細胞も活性化され、免疫力がアップします。
メリット2 幸せホルモンがたくさん作られる
人間は楽しい気持ちになると、「セロトニン」や「ドーパミン」といった神経伝達物質を分泌します。これらは「幸せホルモン」とも呼ばれており、「やる気が出る」「心を落ち着かせる」といった効果をもたらしてくれます。
幸せホルモンの中でも、セロトニンが不足すると次のような症状が現れます。
・慢性的な疲労
・やる気の低下
・イライラする
・ストレスを感じる
・不眠症
・うつ症状
そんな幸せホルモンの大半は腸内で作られています。
セロトニンは、腸内にある善玉菌によって作られます。腸内環境が正常であれば腸で作られたセロトニンが脳に届き、やる気向上や幸福感が得られます。腸内環境が乱れると、セロトニンの分泌量が減るため、精神が不安定になります。
「やる気が出ない」「不眠気味でよく眠れない」という人こそ、幸せホルモンの分泌量を増やすために腸活をするべきです。
メリット3 ダイエット効果
腸活を行うことで腸内細菌が増えて、そこから生み出される「短鎖脂肪酸」も増加します。短鎖脂肪酸は増えれば増えるほど、痩せ体質になるといわれています。
この「短鎖脂肪酸を作る菌」というのは「ビフィズス菌」や「酪酸産生菌」のこと。これらの菌が食物繊維などの“エサ”を食べて分解して短鎖脂肪酸を作り、腸や体のエネルギーになって大腸の中の粘膜を修復したり、消化・吸収や排便を促します。
さらには、脂肪が蓄積されにくくなったり、免疫を調整したりする作用も注目されているのです。
メリット4 美肌へ導く
腸内環境が悪くなると、肌質も悪化することをご存知でしょうか。腸内で吸収された栄養は、血液を通して全身に送られます。善玉菌が多ければ、栄養が肌の隅々まで届くため、美肌を維持できます。しかし、食生活や生活習慣が乱れてしまい腸内環境が悪化すると、悪玉菌が増加します。
悪玉菌は食べたものを腐敗させて、有害な物質を発生させます。体に悪い物質が血管を通って肌に届くことで、肌荒れや体臭・口臭の原因となるのです。
腸活で腸内環境を整えることで、美肌を手に入れられます。
2.腸活はまず食事から工夫を
人間の体は食べ物によって作られるといわれる通り、腸内環境を整えるには食事から変える必要があります。腸活を始めるなら、まずは食事の工夫をおすすめします。
以下では腸活に必要な栄養素や、食事のときに意識したいポイント、腸活に適している料理のレシピをご紹介します。
腸活に必要な4大要素
腸活をしたくても、何を食べたら良いかわからない人も多いはずです。そこで、腸活に欠かせない4大要素をご紹介します。
発酵食品
乳酸菌や酵母菌、麹カビといった微生物の働きによって、食材の栄養素を分解して旨味成分を生成することを「発酵」といいます。発酵食品には、善玉菌が豊富に含まれているため、腸内環境を整えるのに効果的です。さらに、食べたものの消化・吸収を早める、腸内の免疫細胞を元気にするといった効果もあります
発酵食品の代表的なものとして、チーズ、納豆、ヨーグルト、味噌、醤油、鰹節、キムチなどがあります。普段の食事でこれらの食材を多めに食べることで、美味しく手軽に腸活が可能です。
オリゴ糖
オリゴ糖は、腸に良いという言葉を聞いたことはありませんか?オリゴ糖は糖質の一種で、野菜や果物に含まれています。
オリゴ糖が他の糖質と違うのは、胃や腸で分解されない「難消化性」という点です。通常、食べたものは唾液や胃液などで消化・分解され、腸で吸収されてから全身に栄養として行き渡ります。しかし、オリゴ糖は消化・吸収されない状態で大腸まで届きます。
消化・吸収されなかったオリゴ糖を好んで食べるのが、善玉菌の一種である「ビフィズス菌」です。つまり、オリゴ糖をとることでビフィズス菌が増えて、腸内環境が整うのです。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸とは、体内で作られない必須脂肪酸です。主に青魚の脂に含まれており、血液をサラサラにし、頭の働きを良くすると一時期話題になりました。
オメガ3脂肪酸は、腸内に存在する善玉菌を元気にする働きがあるといわれています。
腸活のために、普段の食事にイワシやサバといった青魚をプラスしたり、オリーブオイルや亜麻仁油を取り入れるのもいいでしょう。
水溶性食物繊維
主に野菜や海藻に含まれている食物繊維には、水に溶けない「不溶性食物繊維」と、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」の2種類があります。
どちらも胃や腸で消化・吸収されずに排泄されるため、エネルギーとして使われることはありませんが、糖質や脂質の吸収を穏やかにしたり、腸の働きを活発にする効果があるのです。
中でも水溶性食物繊維は、善玉菌の餌になります。腸内環境を整えるのに水溶性食物繊維は欠かせません。
食事の時に意識したいポイント
腸活には、4大要素を取り入れるだけでなく、普段の食事の仕方も意識する必要があります。
朝食はマスト!規則正しく食べよう
仕事やプライベートが忙しいと、ついつい朝食を抜いてしまうことが多いでしょう。ですが、朝食を抜くことは、腸内環境の悪化を招く原因になりかねません。
朝食を抜くのは、食物繊維や発酵食品など、善玉菌に良い影響を与える食材をとる機会を減らすことにつながります。
また、お腹が空くと昼食を多めに食べてしまいがちです。お腹を満たすためにドカ食いをしたり、油ものばかりを食べるなど食生活が不規則になります。その結果、悪玉菌が増加して腸内環境が乱れてしまうのです。腸活のためにも朝食を抜かず、規則正しく食べましょう。
栄養バランスを整えよう
食事は、栄養バランスが整っていることが重要となります。例えば、毎日コンビニ弁当や外食ばかりだと、栄養が偏ってしまい腸内環境が悪化します。
また、ダイエットをしているときも注意が必要です。食べる量が減ってしまうダイエット時は、食物繊維をとる量まで減少してしまいます。
腸内の善玉菌の餌となる栄養が不足することで、腸内環境が悪化します。その結果、体調不良やダイエットに失敗する恐れもあるのです。
栄養バランスの整っている食事をすることが、腸活を成功させるポイントのひとつです。
よく噛んで食べよう
ご飯はよく噛んで食べることを意識しましょう。食事の際に咀嚼の回数を増やすことで食材を細かくできるため、消化・吸収がしやすくなります。一方、噛まずに飲み込むと、消化しきれなかった食べ物が悪玉菌の餌となり、腸内環境の悪化を招くのです。
腸内環境の乱れを防ぐ意味でも、食事の際は咀嚼の回数を増やすことを意識しましょう。
腸活できる簡単なレシピ3選!
腸内環境を整えるための簡単な腸活レシピをご紹介します。
【お医者さんのレシピ】腸活におすすめ◎「海藻と豆腐のスープ」
海藻には、水溶性食物繊維がたっぷり含まれています。また、豆腐には善玉菌の餌となるオリゴ糖も含まれており、腸活にピッタリの食材です。
レシピの詳細はこちらから!
【お医者さんのレシピ】腸活におすすめ◎「海藻と豆腐のスープ」
【お医者さんのレシピ】ダイエットに◎もち麦で満足感アップの華やかミモザサラダ
食物繊維やオリゴ糖が豊富に含まれている紫玉ねぎやアスパラガス、もち麦を使ったサラダです。簡単に作れるのに、善玉菌が喜ぶ栄養を補えるのがポイントです。
レシピの詳細はこちらから!
【お医者さんのレシピ】ダイエットに◎もち麦で満足感アップの華やかミモザサラダ
【お医者さんのレシピ】たんぱく質・カルシウム豊富!食べ応えも満点◎厚揚げの南蛮煮
大豆製品である厚揚げにも、善玉菌の餌となるオリゴ糖が含まれています。加えて野菜やえのき茸から食物繊維もとれるため、腸活にピッタリな料理となっています。
レシピの詳細はこちらから!
【お医者さんのレシピ】たんぱく質・カルシウム豊富!食べ応えも満点◎厚揚げの南蛮煮
3.腸活のやり方は食事以外にもあり!
普段のちょっとした生活の変化が腸活につながります。以下では食事以外でできる腸活のやり方をご紹介します。
コップ1杯の水で腸を目覚めさせよう
朝起きてコップ1杯の水を飲むことで、睡眠中に鈍っていた腸の働きを活発化できます。胃腸の働きが鈍いと、栄養の吸収が十分に行われません。その結果、全身に栄養が運ばれず体調不良を招くのです。毎朝起きてコップ1杯の水を飲むことで、腸の働きを促す効果があります。
体内時計を整えよう
体内時計が狂うと、腸内環境が悪化するといわれています。夜遅くまで起きていると、朝起きる時間が遅くなりがちです。その結果、朝食を抜く生活が続いてしまい、食物繊維など善玉菌の餌となる栄養素が不足します。
さらに、腸内環境が悪化することで、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンの分泌量にも悪影響を与えます。メラトニンを作るのは「幸せホルモン」といわれるセロトニンです。腸内環境が悪化することでセロトニンの量が減ります。その結果、メラトニンも不足するため、睡眠不足を招くという悪循環に陥るのです。
体内時計をリセットするには以下の方法がおすすめです。
・朝起きたら陽の光を浴びる
・休日も夜更かしせずに朝起きる
・朝食をしっかり食べる
・昼寝は午後3時までに30分ほどにする
・筋トレや有酸素運動を取り入れる
・就寝の2時間前までに夕食を済ませる
・就寝の1~2時間ほど前にぬるま湯に浸かる
・部屋の照明は明るくしすぎない
・就寝直前にスマホやPCは控える
・寝る前にお酒は飲まない
以上を実践することで、体内時計のリセットが可能です。
背筋をしっかり伸ばそう
近年はリモートワークの時間が増えたこともあり、パソコンの前に座りっぱなしという人も少なくないはずです。長時間同じ姿勢を続けているうちに、気がつくと前かがみになってしまうものです。
猫背のように悪い姿勢で座っていると、腸が圧迫されて血流が悪くなり、腸の働きが鈍くなってしまいます。腸を活性化させるためにも、適度に運動をしたり、意識して背筋を伸ばすようにしましょう。
4.まとめ
今回は、腸活の必要性と効果的な方法をご紹介しました。腸の働きを活発化することで、次のようなメリットが得られます。
・免疫力がアップ
・幸せホルモンがたくさん作られる
・ダイエット効果
・美肌へ導く
食べ物や食べ方を少し変えるだけで、簡単に腸活は可能です。腸を元気にするだけで女性に嬉しい効果がたくさん得られるのですから、今から始めないのは損です。まずは無理のない方法から腸活を始めて、体の内側から綺麗になりましょう。
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この記事の監修者
医学博士
大塚 亮
おおつか医院院長。医学博士。循環器専門医。
オーソモレキュラー・ニュートリションドクター(OND)認定医。大阪市立大学医学部附属病院循環器内科、ニューヨーク州 Columbia University Irving Medical Center, NewYork–Presbyterian Hospital、西宮渡辺心臓脳・血管センター勤務を経て、おおつか医院院長に就任。日本内科学会・日本循環器学会・日本抗加齢医学会に所属。
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