この記事の監修者
医学博士 大塚 亮
2024.07.23
【お医者さんのコラム】塩分をとりすぎると体はいったいどうなる?「減塩」が必要な理由とは
健康に気を使っている方なら、一度は「減塩」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。毎日の食事には欠かせない塩ですが、とりすぎてしまうと様々な健康リスクに繋がる可能性があります。
食事を楽しみつつ、元気な体をキープするためにも、塩分が私たちの体にどのような影響を与えるのか、そしてなぜ減塩が必要なのかについて詳しく解説します。
なぜ塩分のとりすぎはよくない?
塩分は、人間が生きていくために必要な栄養素の一つです。私たちの体内の水分(体液)には、一定の割合(0.9%)で塩分が含まれています。この「塩分」とは、ナトリウムと塩素が結びついた「塩化ナトリウム」のことです。
塩の成分であるナトリウムは、たんぱく質や脂肪と並び、生命の維持に直結する大切な役目を果たしています。たんぱく質や脂肪が体を動かすエネルギー源になるのに対して、ナトリウムは体内のさまざまなシステムの働きを守り、維持するのに役立っています。
具体的には、次のような役割を担っています。
■細胞内外の体液の圧力(浸透圧)を調整し、細胞のバランスをとる
■脳からの命令を電気信号として神経細胞に伝える
■体が酸性になるのを防ぐ
■消化と吸収を助ける
進化の過程で高まった食塩感受性
進化の過程で海から陸で生活するようになった人類の祖先は、食べ物からはなかなかナトリウムをとれなかったため、摂取したナトリウムを効率よく体内に残すシステムが発達しました。
しかし、現代では食塩やエネルギー過多など食事や食生活の乱れにより食塩感受性が強まり、その結果ナトリウムが体内に異常に貯蔵されすぎてしまうのです。
塩分のとりすぎによって起きる体内のメカニズム
塩分のとりすぎによって起きる体内のメカニズムは、まだ十分に解明されていません。しかし、とりすぎで血中のナトリウム濃度のバランスが崩れることが、血圧の上昇に関係するのがわかっています。
私たちの体内では、「浸透圧」という機能が働いて体液の濃度が一定に保たれています。「浸透圧」とは、生物の体内で濃さが違うふたつの液体が細胞膜を隔てて接している場合、薄いほうから濃いほうに水分が引っ張られる力のこと。塩分をたくさんとると血液中の塩分濃度が高くなり、浸透圧の働きで血管内に体内の水分が多量にとり込まれるようになります。その結果、体内を循環する血液量が増え、細い血管の壁にかかる抵抗が高くなり、血圧が上昇すると考えられています。
また、血液量が増えると腎臓にも負担をかけることになり、調整機能などに影響を与え、さらに血圧を上げてしまうという悪循環に入ります。
健康のために心がけたい「減塩」
日本人の1日の平均的な食塩摂取量は9~10g。これは諸外国と比較しても、多いということが分かっています。日本高血圧学会では高血圧治療・予防のために、1日の食塩摂取目標量を6g未満と定めています。いきなり半分に抑えるのは難しいですが、調味料や調理方法を工夫したり、血管の働きをサポートする食材をとるなどして、健康のためにできるだけ減塩を心がけていきましょう。
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この記事の監修者
医学博士
大塚 亮
おおつか医院院長。医学博士。循環器専門医。
オーソモレキュラー・ニュートリションドクター(OND)認定医。大阪市立大学医学部附属病院循環器内科、ニューヨーク州 Columbia University Irving Medical Center, NewYork–Presbyterian Hospital、西宮渡辺心臓脳・血管センター勤務を経て、おおつか医院院長に就任。日本内科学会・日本循環器学会・日本抗加齢医学会に所属。
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