この記事の監修者
薬剤師 坂井 幸子
2023.04.27
悪玉コレステロールはなぜ高くなる?放置するとどうなる?原因と対策を解説
私たちの体に欠かせないコレステロール。細胞膜やホルモンなどを作る材料になるため、とりすぎ・足りないといった状態にならないよう常に適度なバランスを保つ必要があります。
コレステロールの一種である悪玉コレステロールは、その名前から体にマイナスな影響を与えるのではと思われるかもしれませんが、先ほども述べた通り、私たちの体には必要な栄養素のひとつで、悪玉コレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っています。
ですが、注意しておきたいのは、悪玉コレステロールが増えすぎて、体内でバランスを崩してしまうこと。健康診断で指摘をされたり、メディアなどで見聞きするなどしたことがある方もいるでしょう。
この記事では、悪玉コレステロールが高くなってしまう原因や、それゆえに起こる体への影響についてまとめました。後半では改善策もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
悪玉コレステロール値が高くなる原因とは
悪玉コレステロール値が高くなる原因として、まず押さえておきたいのが食事です。高カロリーや高脂肪の食事をとり続けていると、体内の悪玉コレステロールが増えてしまうので、健康診断でも高い数値が出てしまいます。
日本人の食生活は欧米化しているといわれており、和食ではなく肉食中心になっているからこそ、無意識のうちに悪玉コレステロールが増える食事をしているのです。
また、女性は食事面以外でも妊娠や閉経が関係し、悪玉コレステロール値が高くなる場合もあります。「いつも食生活には気を付けているのに、健康診断で数値が高かった…」という方は、女性ならではの理由があるかもしれません。
こちらでは、悪玉コレステロール値が高くなる原因として、食事面と女性の体内で起こる変化について解説します。最近、悪玉コレステロール値が上がって悩んでいる方は、じっくり読んでみてください。
飽和脂肪酸のとりすぎで栄養の偏った食事が多い
脂質を構成する要素は、主に「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類にわけられます。このうち、とりすぎることで悪玉コレステロールを増やすのが飽和脂肪酸であり、血中のコレステロールを下げるのが不飽和脂肪酸です。
以下に、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を含む食品の具体例をまとめてみました。
【飽和脂肪酸を含む食品】
● 油の多い肉類(バラ肉、ひき肉、鶏肉の皮も含む)
● ラード
● バター
● 生クリーム
【不飽和脂肪酸を含む食品】
● 魚介類
● ナッツ類
● 豆類
● オリーブ油
● キャノーラ油
● 大豆油
飽和脂肪酸は動物性の脂に多く含まれており、上記の他にもお菓子やカレールー、インスタントラーメンなどにも使われています。
こちらの記事を読んで「私の食事、飽和脂肪酸をとりすぎているかも…」と感じたら注意が必要です。飽和脂肪酸の入っている食事は、ファストフード店やコンビニなどで手軽に調達できるものが多いので、毎日の生活に忙しいとついつい手に取ってしまいがち。
しかし、日々なんとなく口にしている食べ物が、あなたの悪玉コレステロールを増やす原因になっているのかもしれません。
また、飽和脂肪酸と比べると影響が小さいといわれていますが、食事中のコレステロールも悪玉コレステロール値を高めるとされています。
食事中のコレステロールは、主に鶏卵の黄身や魚卵から摂取されており、個人差はありますが食べ過ぎることで悪玉コレステロールを増やしてしまうのです。
悪玉コレステロール値を上げる食生活に心当たりのある方は、まず飽和脂肪酸を摂取する量を減らし、さらに食事中のコレステロールを控えることが大切でしょう。
女性の体内で起こる変化
実は、女性ならではの理由で悪玉コレステロール値が高くなることもあります。まず考えられる原因が「妊娠」でしょう。
妊娠前と妊娠中のLDLコレステロール値を比較し、上昇していることに驚く方もいますが、これは一般的なことです。
妊娠中は、赤ちゃんをすくすくと育てるためにたくさんのエネルギーが必要になります。最初は、体内でブドウ糖を多く作り赤ちゃんへと流しますが、後半になるとブドウ糖だけでは足りないため、脂質を分解して脂肪酸を生成し、供給しているのです。
このように、赤ちゃんが元気な体で生まれてくるために、妊娠中の女性は糖代謝や脂質代謝に大きな影響を与えているので、コレステロール値や中性脂肪値が高くなります。
出産した後、体に溜められた脂質は赤ちゃんに利用されず、LDLコレステロールも女性ホルモンをしばらく作らないため、コレステロール値の高い状態が続くことに。時間が経つと元に戻るため、あまり心配をしなくても大丈夫です。
次に、女性だからこそ悪玉コレステロールが高くなる原因として、「閉経」も挙げられるでしょう。
女性ホルモンのエストロゲンには、血管についた余分な善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。しかし、閉経後はエストロゲンが少なくなってしまうので、どうしても以前より悪玉コレステロールが増加してしまうのです。
男女の悪玉コレステロール経年変化のデータを見ても、閉経後に女性の悪玉コレステロールが急に増え、男女の数値が逆転するという結果も出ています。
日本人間ドック協会も、女性が閉経後に悪玉コレステロールが増える傾向にあることから、年齢によって基準値を変えているのです。
30~44歳 | 45~64歳 | 65~80歳 | |
基準値 | 152以下 | 183以下 | 190以下 |
もし、健康的な生活をしているにもかかわらず悪玉コレステロール値が高くなったのなら、妊娠や閉経といった原因があるかもしれないので、過度に心配しなくても問題ないでしょう。
悪玉コレステロール値が高い状態がもたらす体への影響
最初にお伝えしたように、悪玉コレステロールは私たちの体に必要な栄養素です。肝臓に蓄えられたコレステロールを全身へ運ぶ大切な働きがあります。
しかし、悪玉コレステロールが増えてしまうと、コレステロールが動脈の壁に入り込み、どんどん溜まってしまうことに。この結果、動脈の壁は厚くなり血管の内腔が狭くなり、血流が悪くなるのです。
このように、悪玉コレステロールは増加しすぎると私たちの体に良くない影響があるため、基準値より高いときは気を付ける必要があります。
注意してほしいのが、「脂質異常症」といわれた方です。脂質異常症をそのまま放っておくと、徐々に大きな病気を招く可能性が考えられます。
では、そもそも脂質異常症とは何かについて詳しく解説していきましょう。
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中における脂質の数値が基準値より外れている状態のこと。悪玉コレステロールが多い以外にも、善玉コレステロールが少ない、中性脂肪が多いなどいくつかのタイプがあります。
以下に、脂質異常症と判断される基準値を記載しているので、チェックしてみてください。
脂質異常症の基準値 | ※脂質異常症の境界域 | |
悪玉コレステロール値 | 140mg/dL以上 | 120~139mg/d |
善玉コレステロール値 | 40mg/dL未満 | ー |
トリグリセライド(中性脂肪) | 150mg/dL以上(空腹時採血) 175mg/dL以上(随時採血) | ー |
Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 150~169mg/dL |
脂質異常症と診断された方は、血中に余分な脂肪が増えており、ドロドロの血液になっているということです。ただ、この状態でも自覚症状はないため、「放っておいても大丈夫かな」と何も対策をしない方も少なくありません。
しかし、放置してしまうと血管壁に余分な脂がくっつき、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなり、血管が詰まりやすい状態になります。
これにより、大きな病気のリスクが高まるので、悪玉コレステロール値が高い方は対策を始めていきましょう。
悪玉コレステロール値を基準値へ近づけるために今日からできる対策
悪玉コレステロール値を基準値へ近づけるためには、以下3つの対策に取り組むべき取り組みましょう。
- 栄養バランスの整った食事
- 適度な運動習慣
- 生活習慣の改善
「とりあえず食事だけ対策すればいいか」など、どれか1つだけを意識して改善するのではなく、全体的にアプローチすることが必要です。
毎日忙しい生活をしていると、なかなか3つの対策をできないように思えるかもしれませんが、どれも今日から取り入れやすいものばかりです。特別に準備するものもないので、気楽に始めてみましょう。
現在、体に違和感がなくても、悪玉コレステロールを基準値へ近付ける対策をしなければ病気へのリスクはどんどん高まってしまいます。
「将来の自分を助けてあげるか」と考え、この機会に健康的な体づくりの習慣にチャレンジしてみてください。それでは、悪玉コレステロール値を下げるための3つの対策について解説します。
栄養バランスの整った食事
まずは、栄養バランスの整った食事を意識してみましょう。
先ほどお伝えしたように、脂身の多い肉やバターなどに含まれる飽和脂肪酸は、とり過ぎると悪玉コレステロールを増やしてしまいます。このため、毎日の食事で飽和脂肪酸を控え、オリーブ油や大豆油などの不飽和脂肪酸をとってみてください。
脂質を減らすには、「赤身の肉を選んで、脂身や皮は取り除く」「揚げる・炒めるよりも蒸す・煮る」など調理に工夫するのもおすすめです。
また、飽和脂肪酸だけではなく、栄養素が偏らないように様々な食材を選ぶのもポイント。
悪玉コレステロールを下げるためのルールを厳格にし過ぎると続かなくなるので、コレステロール値を下げる食品はもちろん、数値をあまり変えない食べ物もとってみましょう。
大切なのは、野菜や魚など栄養バランスの整った食事を行うことです。「具体的にどんな食事をすればいいの?」という方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。
悪玉コレステロールを下げる食べ物はコレ!控えるべき食べ物も紹介
適度な運動習慣
悪玉コレステロールを下げるためには、適度な運動習慣も身につけてみましょう。
運動をすれば摂取しすぎたエネルギーを消費できるうえ、善玉コレステロールを増やす効果があります。
おすすめなのは、中強度以上の有酸素運動を継続して行うこと。具体的には、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの大きな筋を動かす運動を、軽く汗ばむ程度でトライしてみてください。
運動頻度としては、1日に合計30分以上取り組むことが良いですが、毎日の運動が難しい方は週3回からでも良いので取り組んでみましょう。
適度な運動習慣をつければ、悪玉コレステロールを基準値へ近づけられる以外にも、体力がついたりストレス発散ができたりなど、様々なメリットがあります。
「でも、今まであまり運動をしたことがないから、なんだか始めづらい」と感じる方は、車ではなく自転車で買い物に行くなど、1日の身体活動量を増やすことからチャレンジしてみるのが良いでしょう。
運動を習慣化してコレステロール値を下げる詳しい方法は、以下の記事で紹介しているので参考にしてみてください。
運動を習慣化してコレステロール値を下げる!効果的に改善するポイントも紹介
生活習慣の改善
悪玉コレステロールを基準値へ近づけるには、生活習慣の改善にも取り組むべきでしょう。
生活習慣の改善として試してほしいのが、睡眠不足の解消です。しっかりとした睡眠がとれていないと中性脂肪が増加し、悪玉コレステロールも増えてしまいます。さらに、注意力が低下したりストレスが溜まったりなど、体にとって良くないことが起きることに。
睡眠不足を改善するには、規則正しい生活を意識することが重要です。寝る時間と起きる時間を一定にし、目が覚めたら太陽の光を浴びて体内時計をリセットすることで夜に質の高い眠りにつくことができます。
また、ぬるめのお風呂にゆっくりつかるのも、悪玉コレステロールを減らすために取り入れてみましょう。
20分程じっくりと入浴することで、血液がスムーズに流れて新陳代謝が良くなります。これにより余分な脂肪分が取り去られ、悪玉コレステロールの減少につながるのです。
以下の記事では、コレステロールを下げる生活習慣に対してさらに詳しく解説しているので、要チェックですよ。
コレステロールを下げる!今日から簡単に取り組める生活習慣を紹介
まとめ
この記事では、悪玉コレステロールが高くなってしまう原因や、それゆえに起こる体への影響について解説しました。
悪玉コレステロールが高くなる原因としては、「飽和脂肪酸のとりすぎで栄養の偏った食事が多い」「女性の体内で起こる変化」ということが考えられます。数値の高いままにしておくと、大きな病気につながるリスクがあるので、今から対策することが大切です。
悪玉コレステロール値を基準値へ近づけるためには、以下3つの対策に取り組むべき。
- 栄養バランスの整った食事
- 適度な運動習慣
- 生活習慣の改善
この記事で紹介した詳しい対策方法を参考にしながら、トライしてみましょう。
この記事の監修者
薬剤師
坂井 幸子
薬剤師。病気の「治療」と「予防」両方大切だと考え、健康と食物の関係を日々研究。
生活の中で体に必要な栄養を補い、正しいコンディションで過ごせるように栄養学の観点から健康と美容をサポートすることを得意としている。
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