この記事の監修者
医学博士 大塚 亮
2022.12.06
【医師解説】血糖値が上がるとどうなる?血糖値の急上昇を防ぐ方法とは
「血糖値が高い=病気のリスクがある」というのは何となく分かるけれど、
■どうして血糖値が上がってしまうのか
■どうやったら血糖値を下げられるのか、病気のリスクを防げるのか
など詳しく知りたい方へぴったりの記事です。
健康診断で問題なかったという方も要注意。近年「食後高血糖」と呼ばれる人も増えています。今一度普段の食事や生活習慣を見直して、元気な体を維持していきましょう。
1.そもそも血糖値とは
血糖値とは、血液中にどれくらい糖質が含まれているのかを表す数値です。
糖質はご飯やパンなどの炭水化物に多く含まれているほか、一部の野菜や芋類、甘いものにも含まれています。誰しも食事をすると消化吸収されて血液中に糖質が取り込まれ、血糖値が上昇します。
血糖値が上がると、すい臓がインスリンというホルモンを分泌。インスリンの働きで血糖値は正常値に戻ります。
血糖値が上がりすぎるとどうなる?
では糖質をたくさん摂って血糖値が上がりすぎるとどうなるのでしょうか。
一回の食事で糖質をたくさん摂ると、通常の食事の後よりも血糖値が大幅に上昇します。すると、通常量のインスリンでは血液中の糖質を処理しきれず、一時的に高血糖の状態に。体は高血糖を改善しようとよりたくさんのインスリンを分泌し、結果血糖値は急降下します。
私たちの脳が働くためのエネルギーは糖質。インスリンの大量分泌により、脳に送られる糖質までも一時的に低下します。すると脳は省エネのために休息を取ろうとするのです。
つまり、糖質の取りすぎによる血糖値の急上昇・急下降によって脳は休息状態に入り、眠気やだるさ、集中力の低下が生じます。
食後に眠たくなってしまったり、やる気がなくなってしまったりする方は糖質の取りすぎが原因かもしれませんね。
また、インスリンには血液中の糖質を細胞に届けて溜め込ませる働きがあるため、多量に分泌され続けると太りやすい傾向が。
最近体重が増えてきたなと感じている方は、1日にどのくらい糖質をとっているかチェックしてみてくださいね。
「血糖値が高い」状態は、なぜよくないの?
では血糖値が高いと何がいけないのでしょうか。
血糖値が高いと体の中で何が起こるのかご説明します。
糖質を摂取しすぎると、血液の中にたくさんの糖質が取り込まれ、血糖値が上昇。
その血糖値が高い状態が続くと、体の調子を崩し健康リスクを引き起こす可能性があります。
健康な体を維持するためにも、血糖値は正常範囲にコントロールしたほうが良いのです。
血糖値が高くなる原因
血糖値が高くなる原因は「インスリンの効果が得られない」ことにあります。
インスリンの効果が得られない理由は以下のふたつです。
①インスリン分泌の低下
「インスリン分泌の低下」とは、すい臓の機能が低下することによってインスリンの分泌量が減ったり、分泌のタイミングが遅くなったりすること。
日本をはじめとしてアジア人は、欧米諸国の人々に比べてもともとインスリンの分泌量が少ない体質です。そのため、加齢によりすい臓の細胞が衰えるとインスリンを必要量分泌することができなくなることがあります。
②インスリン抵抗性
「インスリン抵抗性」とは、インスリンは十分な量が分泌されているのにも関わらずインスリンの効果が得られないこと。
インスリンの効果が得られない理由は、遺伝や肥満、運動不足、高脂肪食、ストレスにあるとされています。
健康な人の血糖値の値・病気リスクを引き起こす血糖値の値
成人の血糖値の基準は以下の通りです。
空腹時血糖値 | 食後血糖値 | |
健康な人の血糖値 | 110㎎/dl未満 | 140㎎/dl未満 |
糖尿病予備軍 | 110~125㎎/dl | 140~199㎎/dl |
糖尿病の可能性が高い人 | 126㎎/dl以上 | 200㎎/dl以上 |
健康な人がある日食べすぎたからと、糖尿病が疑われるほどに突然血糖値が高くなることはありません。つまり糖尿病予備軍や糖尿病が疑われるほどに血糖値が高い人は、日頃から糖質のとりすぎを続けて血糖値が徐々に高くなり、時間をかけて今の値に至っているわけです。
すでに血糖値が高い人は今までの食事・運動などの生活を振り返り、すぐに改善する必要があります。手遅れになる前に対策をしたほうが良いでしょう。
血糖値はこうやって変化する
食事をとると、胃や腸での消化吸収を経て糖質が血液中に取り込まれます。正常な人では大体食後1時間程度で血糖値はピークを迎え、2時間もするとインスリンの働きで元の空腹時の値に戻ります。
血糖値は1日3食のたびに上昇し、2時間ごとに元に戻るという流れを繰り返します。1日の血糖値の推移をグラフにすると、正常な人は波のような波形を描きます。
空腹時高血糖よりも危険?食後高血糖に気を付けよう
『食後高血糖』や『血糖値スパイク』という言葉をご存知でしょうか。
空腹時血糖値は正常値なのに、食後血糖値だけが正常値を超えることをさす言葉です。
原因は、「糖質の取りすぎ」や「インスリン分泌のタイミングが遅い」こと。インスリンの効果はしっかりあるために食後高くなりすぎた血糖値もしばらくすると正常値に戻ります。ただし、高くなりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが多量に分泌されるため、血糖値の上昇・下降をグラフにするとトゲのように尖った波形になります。
食後高血糖の怖いところは、空腹時血糖が高い人よりも健康リスクが高いことです。
食後高血糖は、普通の採血ではわからず、「ブドウ糖負荷試験」という特別な検査をして初めてわかります。そのため、採血検査で空腹時血糖値のみを調べる健康診断では見つかり辛いのです。
2. 健康な血糖値を保つためにできること
現代人の食生活は高糖質で、血糖値が高くなるリスクが高いと言われています。
また、2019年の「国民健康・栄養調査」によると、運動習慣がある人の割合は男性で 33.4%、女性で25.1%。男性では3人に1人、女性では4人に1人程度しか運動習慣がないことになります。
高血糖の原因のひとつであるインスリン抵抗性は、食事内容・運動習慣に大きな影響を受けています。健康な血糖値を保つためには食事・運動を中心に生活の見直しが大切。血糖値に良い健康習慣について具体的にご紹介しましょう。
【食事編】糖質を抑え、食物繊維を積極的に
食事の欧米化に伴い、現代の日本人の食事は糖質が過剰で野菜が不足する傾向にあります。血糖値の急上昇につながる糖質を控える意識を持つことは大変重要です。毎日の食事は主食・主菜・副菜で栄養バランスが取りやすい「日本食」を中心にして、主食であるご飯の量はお茶碗に軽く盛る程度に抑えましょう。
野菜・きのこ・海藻類に多く含まれる食物繊維は、胃や腸をゆっくり移動して満腹感が得られやすく食べ過ぎを抑える効果があると言われています。血糖値が気になる人はぜひ積極的に食物繊維をとりましょう。
【食事編】糖の吸収をおさえる◎食べる順番は野菜から
食事をする時は、食べる順番も意識してみましょう。
実は、食べる順番も血糖値に大きな影響を与えています。
「ベジファースト」という言葉はご存知でしょうか。その名の通り、野菜を先に食べること。数年前から野菜を先に食べるとダイエットに良い効果があると話題になりましたね。これは、野菜に含まれる食物繊維が食べ過ぎを予防し、食後の血糖値の急上昇を抑えてくれるためです。
食事ではまず先にサラダを食べて、次にタンパク質豊富な主菜を、最後に主食であるご飯を食べると血糖値の上昇が緩やかになります。
【運動編】食後の散歩でもOK!日常でも体を動かす習慣を
運動不足や運動不足の末の肥満はインスリンの効きを悪くします。日頃から運動習慣を身につけて血糖値の上がり過ぎを防ぎましょう。ジョギングなどの有酸素運動と筋トレを組み合わせて行うと、血糖値に良い効果が得られるとされています。
激しい運動が苦手な人や足腰に痛みがある人は、まずは軽い散歩からでもOK。最初は無理せず、継続できる範囲で行うことが運動を習慣化する秘訣です。
3.まとめ
今回は血糖値が上がるとどうなるのかについて詳しくご説明しました。
記事の概要を簡単にまとめます。
・血糖値の急上昇・急降下は眠気や太りやすさにつながる
・血糖値が高いと健康リスクを引き起こす
・血糖値が高くなる原因はインスリンの効果が得られないため
・健康な血糖値を保つためには糖質を抑え食物繊維を積極的にとること、運動習慣を身につけること、野菜から先に食べることが大切
今の生活を変えることは簡単ではないかもしれません。糖質の多い食事は美味しいですし、運動は正直面倒ですよね。でも、これから先も元気で健康的に過ごし人生を楽しむには、血糖値のコントロールが非常に大切です。まずは小さなことでも構いません。少しずつ生活を見直して健康な体づくりをしていきましょう!
この記事の監修者
医学博士
大塚 亮
おおつか医院院長。医学博士。循環器専門医。
オーソモレキュラー・ニュートリションドクター(OND)認定医。大阪市立大学医学部附属病院循環器内科、ニューヨーク州 Columbia University Irving Medical Center, NewYork–Presbyterian Hospital、西宮渡辺心臓脳・血管センター勤務を経て、おおつか医院院長に就任。日本内科学会・日本循環器学会・日本抗加齢医学会に所属。
記事に関連するタグ
同じカテゴリーのコラム
人気のコラムランキング