この記事の監修者
薬剤師 坂井 幸子
2023.03.14
【食後血糖値のピークは?】食後1時間/2時間/3時間後の動きについて解説
「血糖値が高い」という状態は、健康にあまり良くないというのはなんとなく理解されている方が多いと思います。では、食後に血糖値がどのように推移しているかはご存知でしょうか。
実は食後血糖値のピークを迎える時間や元に戻るまでの時間は、健康な人とそうでない人で異なります。
この記事では、食後1時間/2時間/3時間後の血糖値の動きについて紹介しています。食後の血糖値がどのくらいでピークを迎え、どのくらいで正常値に戻るのか、どんな対策方法があるのかこの機会にぜひ知っておきましょう。
食後は誰でも一時的に血糖値は上がる
「食事の後に血糖値が上がるのは良くないこと」と考える方も多いですが、食事では糖を摂取しているため誰にでも起こる自然なことです。
食事で、ご飯やパンなどの炭水化物(糖質)を食べると、口の中で噛み砕かれた後にだ液で分解されます。さらに、食道などを通って小腸でブドウ糖に分解、吸収されてから、血液中に移行されるのです。
このように、食べ物を体に摂取する過程により、食後に血糖値が上がるのは当然といえます。
しかし、健康な人・食後高血糖(糖尿病予備軍)の人・糖尿病の人と3パターンに応じて、それぞれ血糖値のピークは異なるのです。
一般的に健康な人の場合、食後2時間以内には正常値に戻ります。しかし、食後高血糖の人や糖尿病の人は、血糖値の上昇を抑えるインスリンの分泌量が少なかったり、動きが悪かったりなどで、なかなか血糖値の下がらない状態が続くことに。
食後しばらくしても血糖値が高いままだと、知らず知らずのうちに健康リスクを招いている可能性があります。
こちらでは、食後1~3時間における血糖値の変化を解説しました。さらに、食後の血糖値をゆるやかに上げる方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
食後1時間/2時間/3時間後の血糖値の変化
食後1~3時間における血糖値の変化は、以下3つのタイプ別に確認するとよりわかりやすくなります。
1.健康な人:血糖値が正常値である人
2.食後高血糖の人:食後2時間を過ぎても、血糖値が高い状態の人(糖尿病予備軍)
3.糖尿病の人:高血糖が慢性的に続く人
これらの人が、食後1~3時間でどのように血糖値が変化するのか、下記のグラフ で表してみました。
健康な人は、食後の血糖値がゆるやかに戻っていきますが、食後高血糖の人は変動が大きく、糖尿病の人はなかなか血糖値が下がりません。
また、健康な人は食後1時間以内にピークを迎え、食事から2時間後には正常値の140mg/dl未満に戻っていることがわかります。
一方、 食後高血糖の人や糖尿病の人はピークを迎えるのが遅く、正常値に戻るまでに時間がかかっていますね。
健康な人・食後高血糖の人・糖尿病の人の判断基準としては、こちらの表をご覧ください。
食後2時間の血糖値 | 空腹時の血糖値 | |
健康な人 | 140mg/dl未満 | 110mg/dl未満 |
食後高血糖の人 | 140~200mg/dl未満 | 110~126mg/dl未満 |
糖尿病の人 | 200mg/dl以上 | 126mg/dl以上 |
現在、健康診断で行なわれている糖尿病の検査は、空腹時の血糖値を計るもの。つまり、健康診断では問題がなくても、実は食後血糖値が基準値を超えており、食後高血糖である人もいるので、注意が必要です。
食後高血糖の人が気を付けるべき理由としては、「血糖値スパイク」が起こっている可能性があるから。
血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇や急降下する状態のことです。血糖値の乱高下は血管にダメージを与えてしまうので、健康に悪影響を及ぼすと考えられます。
血糖値スパイクが起こりやすい人の特徴としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
● 炭水化物中心の食事をしている
● 食べるスピードが早い
● 日常的に運動をしていない
1つでも当てはまるものがあった場合は、早い段階から予防対策に取り組むことがおすすめです。次項では、食後の血糖値をゆるやかに上げる具体的な方法を紹介しているので、ぜひ読んでみてください。
食後の血糖値をゆるやかに上げるには
食後の血糖値をゆるやかに上げるには、以下3つの方法に取り組んでみましょう。
1.糖質の摂取量を減らす
2.食物繊維の摂取量を増やす
3.噛む回数を増やす
まずは、糖質の摂取量を今よりも減らしてみてください。例えば、「お昼ご飯はカップラーメンだけ」といった食生活を変えるだけでも、効果が期待できます。
ただ、糖質を含む炭水化物は人が生きていくうえで大切な栄養素なので、必要以上に食べなくなるのはNG。血糖値を上げやすい食品である「高GI食品」を避けて、「低GI食品」を選ぶと血糖値がゆるやかに上昇するので一押しです。
以下には、高GI食品と低GI食品の例をまとめたので、参考にしてみてください。
【高GI食品】
● 白米
● うどん
● 食パン
【低GI食品】
● 玄米
● そば
● 全粒粉パン
次に意識するべきなのは、食物繊維の摂取量を増やすことです。食物繊維は体内でブドウ糖の吸収を遅くするので、血糖値の急激な上昇を抑えられるといわれています。
食事では、野菜などの食物繊維を多く含む食べ物から摂取すると、腸をコーティングして後から入ってくる糖の吸収をゆるやかにしてくれくれます。
さらに、「野菜→肉・魚→炭水化物」の順番で食べると、胃腸の動きが遅くなって消化吸収に時間がかかり、血糖値の急上昇を避けられます。
3番目に押さえておきたいのが、噛む回数を増やすこと。一口に何度も噛むことで、食後1~3時間の血糖値が減少したり、血糖値を下げるインスリンが優位に上昇していきます。
また、噛む回数を増やせば、自然とゆっくりと食事をするようになりますよね。食べるスピードを抑えることで、小腸からの糖質を吸収する速度が遅くなり、血糖値の上昇もゆるやかになると考えられます。
このように、3つの食事方法以外にも、運動を取り入れることも大切です。食後1~2時間後に運動をすると、血糖値や中性脂肪値の上昇がゆるやかになるといわれています。
簡単な筋トレを1~2分行なった後、ウォーキングや階段の上り下りなどに取り組んでみましょう。
まとめ
今回は、食後1~3時間後における血糖値の動きや、食後の血糖値をゆるやかに上げる方法について解説しました。
食後に血糖値が上がるのは一般的ですが、急上昇・急降下してしまうと健康に悪影響を及ぼしてしまいます。つまり、血糖値関連で考えておきたいのは、ピークではなく上昇や降下するスピードです。
血糖値をゆるやかに上げるには、「糖質の摂取量を減らす」「食物繊維の摂取量を増やす」「噛む回数を増やす」と3つの方法に取り組むのが効果的。さらに、運動を日常的に取り入れて、血糖値スパイクを防ぎましょう。
この記事の監修者
薬剤師
坂井 幸子
薬剤師。病気の「治療」と「予防」両方大切だと考え、健康と食物の関係を日々研究。
生活の中で体に必要な栄養を補い、正しいコンディションで過ごせるように栄養学の観点から健康と美容をサポートすることを得意としている。
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